内的自己対話―川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。

雑感

出逢えずに終わる本、幸いにも出逢えた本、そしてこれから出遭うであろう本

古今東西の名著・名作と評判の高い本に話を限ったとしても、著者名あるいは書名はどこかで聞いたことがあるというだけで、結局は読まずに終わる本は無数にある。 そもそもその存在さえ知らずに終わる本もこれまた無数にある。これはどんなに超人的な読書家で…

精神の「自由落下」という常態を隠蔽しているだけの日常の雑事

突然、精神の「chute libre (自由落下)」とでも呼ぶべき不安定な状態に陥ることがある。いつそれに襲われるかはほぼ予測不可能である。 今日、三つの授業を終え、届いた注文書を市の中心部の本屋に取りに行き、そこからの帰り道に少し買い物をして帰宅した…

「くよくよしているとき、話は聴く。でも、時間を無駄にするな。今できることに集中しろ」って、私はいったい誰に言っているのか

シンポジウム初日の水曜日、発表の合間に大学の仕事専用メール・ボックスをチェックすると、修士二年の一人の学生から「先生、相談に乗ってください」とメールが届いている。 彼女は、学部三年間断然トップの成績で首席を独走していた学生で、学部卒業直後の…

シンポジウム三日目 ― 歓待の時空の実現

今日三日目は九つの発表が午前と午後に分けて中央キャンパス敷地内の Collège Doctoral Européen (CDE) で行われた。 午前から午後にかけてのexils をテーマとしたセッションは、そのテーマをめぐってのそれぞれに異なった概念、作品、作家、時代、場所につ…

シンポジウム二日目、二人のアフガニスタン政治難民の体験談に感動する

私の発表のタイトルは « Ibasho (居場所) : le refuge de vie dans la société japonaise contemporaine ? »。準備過程では疑問符はなかったのだが、原稿をほぼ仕上げてみて、結果として、反居場所論になってしまったので、疑問符を付けることにした。この疑…

シンポジウム「Le théâtre comme refuge ? Une utopie hospitalière 〈避難所〉としての〈演劇〉 ― 歓待のユートピア」第一日

今日から金曜日までの三日間のシンポジウム「Le théâtre comme refuge ? Une utopie hospitalière 〈避難所〉としての〈演劇〉 ― 歓待のユートピア」が今朝始まった。 初日の今日は、ストラスブール国立劇場で行われた。普段は演劇の上演に使われる大きな劇…

日仏学生交流月間

毎年三月は日本の大学生の海外研修旅行が集中する。ストラスブールにも何グループか毎年やって来る。その一つの受け入れ担当になっている。 交流会のためにたいした準備は必要ないし、拘束時間もせいぜい三時間程度だが、ちょっと負担には感じる。適当な教室…

「反居場所論」脱稿

なんとか思惑通り、12日の発表原稿を冬季休暇最終日である今日日曜日に一応仕上げることができた。一息つきながらこの記事を書いている。 発表時間30分に対して、ただ読み上げるだけでも45分はかかるであろう長さになった。それでも盛り込みたい論点を相当に…

不愉快な気持ちの「はけ口」を求めて、ヴィクトル・ユーゴの『笑う男』のユルススに親近感を持つに至るの巻

フランス語に exutoire という言葉がある。「(欲求などの)はけ口」という意味で使われる。私はこのブログをそのためには使いたくないと思っているが、ときについ気持ちをぶちまけたくなることはある。 昨日、授業の合間にメールをチェックすると、30分程の…

不味すぎて誰も食えないミックス料理?

1月26日に後期の授業が始まってから今日まで仕事上心理的には気が休まらないという意味で一種の「懸垂状態」が続いていたが、そのさしあたりの区切りになんとかたどり着いてすこしホッとしている。一つ一つは大したことではないが、それらのことがすべて片付…

居場所・アジール・「無縁」の原理

来月11日から13日にストラスブール国立劇場とストラスブール大学で開催される国際シンポジウムの準備が最終段階に入り、総責任者の一人である学科の同僚から、シンポジウムのタイトルの日本語訳や日本からの参加者向けの日本語メッセージの添削を頼まれ、今…

推薦状の季節

この時期、各種奨学金あるいはJETプログラムに応募する学生たちからしばしば推薦状を依頼される。学科長だったときに比べれば減ったが、それでも相当数来る。 基本、引き受ける。引き受けたからには、当然、推薦する当人を褒める。でも、その褒め方が紋切り…

南北朝祇園社綿新座における女性「神人」の活動記録から見えてくる中世女性像

昨日の記事で言及した祇園社綿新座における女性の役割に特化した研究はこれまでほとんどなかった。それは当時の女性の活動を記録した史料が乏しく、誰も手を出さなかったからである。このテーマに果敢に取り組もうというのが昨日言及した修士論文である。 『…

北海道、青島、そしてストラスブール ― ZOOMと自転車で駆け回る

午前8時から、今月20日の日仏遠隔合同ゼミに北海道から参加してくれる学生さんたち向けに事前説明会をZOOMで70分ほど行う。合同ゼミ参加予定者8名のうち7名が出席。ゼミが円滑に行われるために、今回の企画に至る経緯と当日の流れについて一通りの説明をする…

四人の「聴衆」を前にした「講演」

まあ、あの、なんと言いましょうか、今日は一日ほぼ無駄にしてしまったなあ、というのが率直な今の感想です。ほかにやるべきことが山ほどあったのに……と、臍を噛む思いです。 アルザス地方のとある小さな町(その町の名誉のために名前は伏せます)で講演をし…

日本からの荷物一つ受け取るのも楽ではないフランスに暮らす「けなげな」日本人

今、私は腹を立てながら、笑っている。 先月23日に妹が東京から小包を私宛に発送してくれた。ところが、3日経ってもこちらの請負配送業者である Chronopost (あの悪名高き)のサイトの追跡ページに反映されない。ようやく月末31日なって、Roissy の国際交換…

「自分語り」はなぜ嫌われるのか

自分自身の経験だからといって、上手に、そして正確に、話せるとはかぎらない。 話し慣れていない人や普段から口数の少ない人が、自分の経験を語れと言われて、事細かにしかも生き生きと話せるとはかぎらない。 そもそも、誰だって自分のことだからといって…

引きこもる日々の妄想日記 ―「寒いんすよ、マジで」「だったら、とっととくたばれば、爺さん」「そうやね、それが現代のオプティミズムかもしれんね」

夜明けの白鳥の孤影 今日、早朝、予定していた仕事が予想以上に順調にこなせました。で、時間に少し余裕ができそうだから、午前中にちょっと外で運動しようかなと思ったのです。ところが、天気予報によると、めちゃ寒いんすよね。最低予想気温マイナス8度。…

昨年放映のNHKドラマ秀作二本「どうせ死ぬなら、パリで死のう」「ひらやすみ」

世田谷下馬西澄寺境内 拙ブログをお読みくださっているからコメントとして新年のご挨拶とお見舞いのお言葉を昨日頂戴し、そのなかに「骨折は、3・3・6(3週間、3カ月、6年)と言われているようです。3週間で疼痛軽減、3カ月で骨が癒合、6年で骨が再構築する…

明日からオンリー・サイテーション・モード

明日からノエルの休暇に入ります。で、このブログも事実上少なくとも年末までお休みします。ただ、このブログには、以前にも何度か話題にしたことがありますが、「私、まだなんとか生きています」信号という機能もあるので、よほどのこと(緊急入院とか、警…

7年かかった修士論文、よく諦めずに仕上げました!

オランジュリー公園の秋模様 ほんとうに仕事でお忙しい毎日を送られている方々には、なに甘ったれたこと言っているのと軽蔑されてしまうと思いますが、ワタシ的にはとてもハード・スケジュールだった一週間をなんとか乗り切り、今、ほっとしているところです…

「アグネ」続ける人生

Salle de l'Échiquier 「あぐねる」という動詞がある。漢字は「倦」を当てる。「あぐむ」と同義。 「あぐねる」は、江戸から明治にかけては、単独で「もてあます。しつづけていやになる」の意で用いられている例が少なからずあるが、現代日本語では、他の動…

シンポジウム「詩的に世界に住まう」初日 ―「何にもかも順調」はやっぱり「凶兆」だった

カーン・ノルマンディ大学のキャンパス中央の緑の広場 昨日はすべてが順調だった。それがいけなかった、わけではないが、私の発表の際にトラブルのダブルパンチに見舞われた。「なにもかもあまりに順調なのは凶兆である」という格言を作りたい気持ちである。…

穏やかな空気が流れるカーンの街から

カーンのサン・ピエール教会(城塞の上から撮影) 今日昼過ぎにストラスブールをTGVで発ち、パリ東駅へ。東駅からサン・ラザール駅までメトロ7番線・3番線を乗り継いで移動。そこからシェルブール行きのノルマンディ地方列車に乗車。午後16時59分カーン駅…

恐れつつ願っていること

注:以下、「ヤバい」という言葉を旧来の意味で使っています。若者たちのことはぜんぜん嫌いではありませんが、いわゆる若者言葉は死ぬほど嫌いな私です。 日本もいろいろとそうとうにヤバいことになっているようだが、フランスもヤバさ加減では負けていない…

小人、閑居して不善も為さず、唯呆然と立ち尽くすのみ

昨日木曜日に来週のシンポジウムでの発表原稿及びパワーポイントが完成し、今朝はイメージトレーニングと所要時間確認をかねて原稿を声に出して読んでみた。ただ読み上げるだけなら35分弱。これに当日場の雰囲気に応じて適当にアドリブを入れれば40分になる…

多様な「声」が響き合うシンポジウムへの期待と不安

ライン川を下る 今週月曜日には、9月13日の記事で話題にした記念論文集のための論文を編集者に送信し、今日の午後にはいくつかの案件に区切りがつき、今月15・16日にカーン・ノルマンディ大学で開催されるシンポジウム « Habiter poétiquement le monde »(…

認識の甘さと初期対応のまずさが引き起こした厄介な事態

今日の午後、修士の演習を終え帰宅して大学用のメールボックスを開いて一驚した。今日の午前のある一つの出来事とそれが原因の一通のメールをめぐって、同僚たちの間でのやりとりが二十通ほど届いている。何ごとかと胸騒ぎを覚えながら、それらのメールを時…

先週の二つのトラブルに関する(誰から頼まれたわけでもない)無意味にもっともらしい結果報告

リクヴィールの名店の一つ 先週話題にしたプリンターのトナー注文に関する空騒ぎは、まさに文字通りにそのような結果に終わった。誤った思い込みで狼狽し、てんてこ舞い、終わってみればただのくたびれもうけ、落ちもなく、笑い話にさえならない。 発注した…

社交性ゼロ人間の悲哀

野鳥観察小屋 以下、愚痴である。 社交性とは、見ず知らずの他人たちと居合わせたその場所においてそれらの人たちと適切な会話を行うことができる能力であるとするなら、私には皆無である。 レセプションとか懇親会とか立食パーティとか、そのような場所に片…